【考察】映画『PLAN75』を観た感想、考えたこと

【考察】映画『PLAN75』を観た感想、考えたこと本・映画・ドラマなどの考察

こんにちは、ニンジャです!
今回は、映画『PLAN75』を観た感想考えたことを、お伝えしたいと思います。

映画の内容には触れていますので、映画をまだ観ていなくて、「内容をまったく頭に入れたくない!」という方は、ぜひ映画をご覧になった後に見に来てください!

映画『PLAN75』は、日本人の早川千絵さんという監督の長編デビュー作。

デビュー作でありながら、第75回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品されたことでも話題になっている映画です。

高齢化社会をテーマにした映画で、日本に暮らしている身として考えることの多い、とても良い作品でした。

では、まずはごく簡単に映画『PLAN75』のあらすじについて紹介します!

『PLAN75』のあらすじ

舞台は、「増えすぎた高齢者が若者の負担になっている」という考え方から、高齢者施設での虐殺・テロが頻発するようになった日本。

高齢者施設での虐殺・テロを契機として、75歳以上が自ら死を選べる制度「PLAM75」が、国会で可決されます。

主人公はひとり暮らしで家族も居ない、75歳以上の女性。

他にも、制度を運用する側の「公務員」、高齢者をケアする側のケア労働に従事する「外国人労働者」など、様々な立場の登場人物が描かれています。

日本は、世界の中で最も高齢化が進んでいる国のひとつ。
最も身をもって感じやすい、身近な社会問題が「高齢化」だと思います。

しかし、これまで『PLAN75』のように真正面から、この「高齢化」という問題に向き合った映画は無かったんじゃないかな~と思いました。

そういった意味で、これはすべての日本人に観てほしい映画だと思っています!

『PLAN75』で、心に残ったこと/考えたこと

1.高齢者 vs. 非高齢者で分断する日本

この映画では、高齢者と非高齢者が分断している日本が描かれています。

アメリカのトランプ前大統領、イギリスのジョンソン首相など、世界で自国第一主義を掲げる右寄りの政権が誕生しています。

こういった政権に共通している主張は、「移民によって仕事を奪われているので移民を排除しよう」というもの。
つまり、移民 vs. 非移民の構図をつくり、いい仕事がなくて生活が苦しいのは移民のせいだ!と分断を生み出しているのが特徴です。

日本は、移民をほとんど受け入れていないので(技能実習生とかで、外国人労働者は結構受け入れてますが。。)、移民 vs. 非移民という構図はいまいち国民を煽ることができません。

日本でこのような分断が生まれるなら、たしかに高齢者 vs. 非高齢者という分断なのかなと思いました。

いまも高齢者を「老害」と呼んで、敵対心を露わにする人もいたりするので、すでに分断の火種がくすぶっている状態なのかな~と少し不安に思います。

こういった高齢者 vs. 非高齢者の分断を防ぐためには、「若者が高齢者のせいで苦労している」という実感を薄める必要があると思います。

詳しくは、あとの方で書いていますが、「高齢者だから無条件に優遇」という社会保障のあり方を変える必要があると思っています。

2.「PLAN75」の施設で働く人はだれ?

映画『PLAN75』には、老人ホームで働く、東南アジアからやってきた女性の登場人物がでてきます。

彼女は、祖国に夫と病気の子どもを置いて、日本に出稼ぎに来ています。

最初は老人ホームで働いていたのですが、「PLAN75」で亡くなった人を運んだり、所持品を処分したりする仕事に転職します。

現在も、介護やベビーシッターなどの低賃金できついケア労働を、外国人労働者に押しつけている側面があると思います。(しかも、「技能実習生」というあいまいな形で。。)

その側面は、「PLAN75」の世界でも踏襲され、亡くなった人を運んだり、所持品を処分したりする仕事を外国人労働者に押しつけている構図が描かれているのかなと思いました。

「高齢化社会」では、「高齢者のケアを誰が担うのか?」という問題が発生します。

これまでは家族(主に女性)が担っていましたが、最近では高齢者施設などを利用する例も増えてきました。

高齢者施設で働く人には外国人労働者も多く、これまで家族(主に女性)に押し付けてきた介護というケア労働を、今は外国人労働者に押し付けているという側面があると思っています。

日本は、大々的に「移民」という形で外国人労働者を受け入れることを避けて、「技能実習生」というあいまいな形で受け入れていることが問題視されています。

ケア労働の現場だけでなく、農業や漁業などの第一次産業で「技能実習生」として外国人労働者が多く働いています。

「技能実習生」として働いている外国人労働者には、セクハラやパワハラなどのハラスメントを受けていたり、最低賃金以下で働かせられていたりと、劣悪な労働環境に身を置いている人が少なくありません。

「高齢者のケアを誰が担うのか?」という問題を解決することと、ケア労働を担う人の労働環境の改善はセットで行うべきだと改めて感じました。

3.死を選んだ途端、つながりが生まれる

主人公の女性は、家族もおらず、ひとり暮らしです。
仕事はホテルの清掃をしていたけれど、途中でクビになってしまいます。

ホテルの清掃をクビになってからは、仕事もなかなか見つからない、家も借りられない、ホテル清掃時代の仕事仲間とも疎遠になる、という「つながり」がまったく無い状態になってしまいます。

その結果、主人公の女性は「PLAN75」に申し込んで死を選ぶ決断をすることに。

「PLAN75」に申し込むと、毎日担当者と15分お話できるというサービスが始まります。
死の不安を打ち消すために、政府が用意しているサービスです。

主人公の女性は、本当はダメなんですが、その担当者とボウリングに行ったりして、すごく楽しそうなシーンが描かれます。

これまで仕事をクビになったり、仲間と疎遠になったりと暗いシーンが続いていたのですが、「PLAN75」に申し込んでから明るいシーンが続くようになります。

本当は死を選んでからではなく、”死を選ばないように”こういった「つながり」を提供すべきだよなと思いました。

「つながり」が無くなり、生きていく意味を見いだせなくなって初めて、「つながり」が生まれるというのは、本作最高の皮肉で、一番心に残ったシーンです。

社会は「お金」と「つながり」を保障すべき

さいごに、映画のストーリーとは少し離れて、この映画をきっかけに考えたことを少し書いて、終わりたいと思います。

僕は、社会保障では「お金」と「つながり」を保障するべきだ、と考えています。

「お金」の問題

優先順位としては、まず「お金」。
衣食住などの生きていくために最低限必要なものは、すべてお金で買うことができます。

そのため、まずは生きていくために必要なお金がない人に、お金を給付するということが必要。

しかし、いまは「お金が無い人」ではなく、「お金がなさそうな人」にお金を給付してしまっています。

一番の例は、高齢者に対する数々の給付金や負担軽減制度です。

高齢者は収入が無いので、「お金が無さそう」とみなされます。
しかし、実際には貯金がいっぱいある高齢者もたくさんいます。

「高齢者だから」という理由で社会保障を提供していては、「生活が苦しい若者が、裕福な高齢者の犠牲になっている」と感じる人も増え、非高齢者の不満が高まっていきます。

高齢者 vs. 非高齢者の分断を防ぐためにも、「高齢者だから」という理由での社会保障の提供はやめるべきだと思います。

方法としては、マイナンバーカードで収入だけでなく貯金も把握できるようにしたり、ベーシックインカムで一律にお金を給付したりと、色々考えられます。

この「お金」の問題は、分配を最適化するだけなので、さっさと進めてしまうべきだと思います。

なぜなら、「お金」の問題よりも、「つながり」の問題のほうがやっかいだからです。

「つながり」の問題

たとえ生きていくために必要なものが揃っても、社会とのつながりを感じられないと、人は生きる意味を失います。

この「つながり」を用意することが、とても難しいと感じています。

これまで、「つながり」は主に家族と仕事場が提供していました。
しかし、これまでのような家族の形が崩壊していき、雇用形態も多様化している現在、家族と仕事場は「つながり」の提供元としての役割を果たせなくなっているように感じます。

そうなると、高齢者にも若者にも、「つながり」を提供することが社会保障の大きなテーマになります。

ただ、「つながり」はお金のように一律に給付すればいいものではありません。
それぞれ人によって求める「つながり」の形は違いますし、「つながり」をそんなに求めない人もいます。

「つながり」を押し付けることにはならないようにしながらも、「つながり」を求める時には確実に供給できる状態を目指さなければいけません。

僕の中でもじゃあそうしたらいいか答えは出ていないのですが、とりあえず「つながり」を得る場の選択肢をたくさん用意していくしかないのかなと思います。

いまでも、ボランティア活動や地域のコミュニティなどがありますが、そのような「つながり」を感じられる場所をいくつも用意していくといいんじゃないかなと思います。

とりあえず言えることは、「お金」よりも「つながり」を保障する方が難しいこと!
だからこそ、とっとと「お金」の問題は解決して、「つながり」の問題にみんなで取り組むべきだと思います。

さいごに

今回は、映画『PLAN75』を観た感想や考えたことを、お伝えしました。

「高齢化社会」という日本人に最も身近な社会問題をテーマにした、とても考えさせる作品です。
まだ観ていない方は、ぜひ観てみてください!

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参考サイト

『PLAN75』オフィシャルサイト

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