こんにちは、ニンジャです!
今回は、辻村深月・作の『凍りのくじら』のあらすじ・見どころ・感想を紹介します。
『凍りのくじら』を読もうかどうか迷っている方、どういう話かネタバレ無しで知りたい方はぜひ参考にしてみてください!
『凍りのくじら』のあらすじ
まずは簡単にあらすじを説明します。
主人公の理帆子は高校生。少し頭が良いため、周りの人たちを見下しながらも、うわべだけで適当に話を合わせて上手くやっていっています。
理帆子の父は5年前に失踪して行方知らず、母は病を患い残り少ない余命を病院で過ごしています。
どこにも居場所を感じられない理帆子に、学校の図書館で、ある青年が「写真を撮らせてほしい」と声をかけてきます。その青年はとても不思議な人物で、理帆子は上辺だけでなく、だんだんと本音で話すように。
そんな中、気づかぬうちに訪れる警告。その警告に理帆子が気づいた時には、事態は取り返しのつかないところまで発展していて…というのが大まかなあらすじです。
また『凍りのくじら』はドラえもんをモチーフにしている作品です。
各章のタイトルにはドラえもんのひみつ道具の名前がついていますし、理帆子も父の影響で大のドラえもん好きです。
物語の随所にもドラえもんの要素が散りばめられていて、そこも楽しい作品となっています。
『凍りのくじら』の見どころは?
続いて、『凍りのくじら』の見どころについてお伝えしたいと思います!
個人的に見どころだと思うところは、次の3点です。
1.主人公・理帆子の成長過程
個人的に最も感動・共感した点は、主人公・理帆子の成長です。
理帆子は周りを見下して、馬鹿にしているような高校生です。象徴的なエピソードは、理帆子の「遊び」です。それを印象づけるかのように、第1章「どこでもドア」は次のような始まり方をします。
私の尊敬する藤子・F・不二雄先生が残した言葉にこんなのがある。
辻村深月・作『凍りのくじら』第1章「どこでもドア」より
『僕にとっての「SF」は、サイエンス・フィクションではなくて、「少し不思議な物語」のSF(すこし・ふしぎ)なのです』
そこから遊びで、まわりの人の個性をSF(すこし・なんとか)で表します。例えば、クラスメイトから浮いている同級生はSukoshi・Fuan(少し・不安)、自分の母親にはSukoshi・Fukou(少し・不幸)というように。
これはいつの頃からか始めた私の独特の遊びだ。本当の意味での「SF」が全く関係ない場所で、人や物事の性質にこの言葉を当て嵌める。スコシ・ナントカ。
辻村深月・作『凍りのくじら』第1章「どこでもドア」より
そして上辺だけの付き合いが上手く、本当の自分をさらけ出せる場所がない理帆子自身につけた個性は、Sukoshi・Fuzai(少し・不在)。
ここから少し僕の所感を。。
理帆子が本音で自分をさらけ出せなくなったのは恐怖からくるものだと思います。理帆子は大好きな父親が5年前に失踪しています。
大切なものを失ったトラウマが、理帆子にもう二度と大切なものを作らないという風に思わせたのだと思います。
しかし色々な出会い、経験がそんな理帆子を変えていきます。
唯一本音をさらけ出せる存在が現れたり、元々のコミュニティも実は暖かい居場所だったということに気づいたり。
僕は『凍りのくじら』という作品は、「大切なものを失いたくない一心で、大切なものを作らない理帆子に、もう一度大切なものができるまでの物語」だと思っています。
2.家族の物語としての『凍りのくじら』
この作品は理帆子個人の成長の物語でもあり、家族の物語でもあります。
この作品には色々な「家族」が登場します。理帆子と父・母、理帆子の父に恩があると言って良くしてくれる松永のおじさんとその家族。途中で登場する話せない少年・郁也。
それぞれ三者三様の家族の形があり、それぞれに物語があります。
理帆子目線で進む物語なので多くは描かれませんが、そこに家族の物語を必ず感じることが出来ると思います。
3.思わぬストーリー展開
これはあまり詳しくは言えません。ネタバレになるので。。
『凍りのくじら』という作品は、ただただほっこりする人間ドラマではありません。
人間の怖い部分・得体の知れない部分も描かれていますし、手に汗握る展開も用意されています。
『凍りのくじら』のジャンルは何ですか?と聞かれても的確な答えを言える自信がありません。良い意味で一筋縄ではいかない作品だと思います!
『凍りのくじら』の感想
さいごに個人的な感想をさらっと。
はじめに、個人的にすこし残念だったのが、章タイトルのドラえもんのひみつ道具。
話の内容に関係はあるのですが、そこまで納得感のある関係・重要な関係ではなかったような気がしています。
反対にやはり、理帆子の成長というのが一番印象的だったなと思います。
一般的には共感・感情移入しやすい主人公ではないと思うのですが、すこし自分と性格や考え方が似ていたのでものすごく感情移入ができました。
また別れ・失敗などネガティブなことを恐れて、出会い・挑戦を避けてしまう、という経験は心当たりがある方もいるのではないでしょうか?
現実との距離を取っている理帆子が徐々に現実に居場所を見出していく過程は、心に来るものがありました。
さいごに
今回は、『凍りのくじら』(辻村深月・作)の感想や見どころ、あらすじを紹介しました。人にお勧めしたくなるような名作だったので、ぜひ読んだことのない方は読んでみてください!
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